伊月庵通信2年

投句をはじめてちょうど2年なので、選んでいただいた句をまとめてみました。

 

色の歳時記

ジェラートつんとして黄檗色の魔法

紅下黒割つてひかりの獅子頭

ストーブぽぽぽ萱草色にまろむ頬

夕月夜似紫をくりぬいて

牧閉す風は無尽なる鳶色

鶸色の傷口に触る秋の蚊帳

黒鍵のエチュード蘇芳色の秋

凍蝶や止血ガーゼの朽葉色

 

季語の座

爽やかや湯釜白濁して青し

千の風鈴奥より音の迫り来る

風の音を聞き分けてゐる日永かな

初夢の中でも遠慮する性で

落ちのびる蘇芳の闇に香る菊

みづいろをたせば金魚のひかるいろ

釉薬の波動のゆたか雲雀東風

大根のしあわせそうにふとりけり

 

百囀集

梅咲くや瘤のやうなる止め払ひ

うららかや個体識別番号ひかる

はんてんするかびんのせかいヒヤシンス

 

おしゃべりな目高のあわきスケルト

とうめいな卵のいくつ布袋草

 

ざくと割れころんと逃げる西瓜かな

豆腐屋の屋号の淡しオクラ咲く

 

狐火のうつる眼底ぬくぬくす

マスクしてタルトタタンをえらびけり

 

 

結果は……

黄檗色と紅下黒が佳作、それ以外は秀作、

大根と菊と日永が佳作、金魚が3位、爽やかが18位、それ以外は秀作、

雑詠はすべて秀作です。